蝶樹の浅海人奇譚

to be or not to be anywhere to be that i will be … to be going to go on with the tortoise 'Saku' and my sincere companion , If justice is human love …

あなたの身近にあるコンピュータ犯罪 (つづき)

前回の話のつづきを書きたい。


先に断っておくが、コンビニエンス・ストア業界のフランチャイザーである本部がすべてこのようなことをしてると言ってるわけではない。これは実際、過去にあったノンフィクションなフランチャイズ契約であり、高度なコンピュータ・システムを利用した優越的地位の乱用で締結した不公正取引契約の実態を垣間みてほしいのが目的である。


また、常に存在する人間とくに一個人には不可抗力にちかい犯罪の特質として、ビックデータがもてはやされるコンピュータ業界の現在において、コンピュータ無くして存在できない業態では潜在的に常に存在するリスクとなる。特にその部分に小生は嘆かわしく、身も詰まる思いなのだ。


コンビニエンス・ストアの成功要因には多くあるだろうが主なものとして、

・立地条件による集客能力を統計的に分析した精度の高い出店計画書

・魅力ある商品開発とその広告

・地域サプライチェーンとの互恵的関係による成長戦略

・均一な付帯サービスの差別化と持続的な提供

・徹底したコスト削減のためのITシステムの活用

・FC本部側店舗指導員の熟練したメンター・スキル

・加盟店オーナーの経営能力

なのだろう。


市場として飽和したと唱えられた20年前でさえ、コンビニエンス・ストアを運営する本部側はドミナント戦略といわれる加盟店の採算性を無視した出店ラッシュ攻勢の真っ盛りな戦略がまかり通っていたのだ。


まさに『共食い』の状態は意図的に演出されたのである。


弱者である加盟店オーナーは、脱サラで初めたもの、定年後の退職金で初めたもの、親の不動産を抵当に入れてまで融資して初めたもの、さまざまな理由で独立経営に夢馳せてスタートしたものたちなのだ。


その夢は3ヶ月もしないうちに打ち砕かれる。本部側から一方的に送付される損益計算書には未精算金という名目で本部への負債が記載されるようになる。これが初期コストとして減る体質のものであれば良いのだが、ほとんどのオーナーにはどこからそのような負債が発生するかの理解できる術もない。


なぜなら、その数値そのものがコンピュータの『まやかしのシステム』の出力であり、肝腎の経営判断を迷わせるだけなのだ。


その負債は見る見るうちに膨れ上がり、1年経営して3000万円を越える店舗まで発生するようになる。

ロイヤリティの対価として指導すべき義務のある本部は、そのような経営の危機的状態でも何ら有効な打開策を出しもせず、とどの詰まりはあろう事か店舗オーナーに閉店するように勧めるのだ。


なんら本部の痛まない、まさにクレバーなビジネス・モデル!!!


渦中の加盟店オーナーたち、その悲惨さといえばとても言葉では言い尽くせない。自殺するもの、精神障害で病院へ入院するもの、当然として家庭崩壊となり地獄の底まで落とされる。


人の心の中には鬼が棲むのだ。


止むなく閉店した店舗の本部の扱いは、パチンコ屋でもあるまいし、平然とリフォームして新装開店の準備となるわけである。そこに新たな広告のFC加盟店募集に踊らされた独立心旺盛な次なるカモが誑かされる仕掛けだ。小生たちはこれを『オーナー転がし』と名付けた。


コンビニエンス・ストア出店にあたり、前提として最重要なのが立地条件の分析なのだが、『オーナー転がし』といわれるように、この本部の出店計画書は素人相手を騙せる程度の杜撰な説明資料が一枚だけ提示される。あたかも商圏をおさえ集客能力があるような根拠もない詐欺勧誘なのだ。


本来の目的である、『物を売って共存共栄』などオーナー資産の搾取が目的なのだから元々眼中に無いに等しい。


この悪徳商法がコンピュータ・システムの介在なくして実現できない商法で、一生を台無しに悲しい末路に追い込まれた加盟店オーナーたちが日本中どのぐらい存在するであろうか、歴史を遡るだけで背筋に寒気さえ感じる。


かなり迂回してしまったが原価率の話に戻したい。


「いつも原価率が70%なんだよね」、
何を隠そうシステムがそうできてるのだから、それが不可思議でもなく、至って当たり前の事象なのだ。

これが最終ステージまで有識者であるべき弁護士団や商工会の方々に理解させることは無理であった。それは若輩だった小生たちの不徳の致すところである。


実はこの事象の因果関係に初めて気付いたのは小生でなく、友人Wであった。彼は実姉が同じコンビニエンス・ストア経営で多額の負債を抱え込み精神障害で入院したため、実姉の代わりに経営していたのだ。

彼は経営しながら地道な伝票整理で原価率70%の謎を解こうと孤軍奮闘して戦っていたのである。


その彼と小生の最初の打ち合わせは彼の店舗で行なわれた。その内容は小売り業が発想する事柄としてはあまりに突飛なものであり、想定外の談義となった。

彼が小生に「このビデオ観てみませんか」と取り出して見せたもの、それはNHKが特集した『アインシュタイン相対性理論』伝記と解説の何本かのビデオ集であった。

率直な小生の彼への第一印象は彼に誠に失礼なのだが、「この人、頭いかれてる?」と内心思いながら、陰のある表情のなかに彼の言動の意図を小生は穏やかに探ろうとしたことを今でも鮮明に覚えている。

彼が言う「似てるんですよ!ここのシステムがそっくりなんです」


そのとき小生は、この運営会社の創業者が確か宇宙物理学に傾倒していたということを自叙伝で読んだ記憶が再帰したのである。

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※長くなりましたので、次回に締めたいと思います。


 サク